継続利用ユーザー増加に不可欠なオンボーディングの要素と設計

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一度ダウンロードしたアプリが、初回以降二度と使われない確率です。

どんなに素晴らしい体験を提供しても、どんなにデザインにこだわっても、継続利用に繋がらなくては元も子もありません。

本記事では、最高の初回体験、そして高い継続利用率の維持に不可欠であるユーザー・オンボーディングの重要性とその秘訣を解き明かします。

 

目次

 

  •  オンボーディングの定義と重要性
  • オンボーディングに含むべき4つの要素
  • 4つの要素の『When』と『How』を設計する
  • オンボーディングの参考になるサイト集
  • まとめ

 

筆者の紹介

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梶谷健人


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森竜太郎

*詳細はAbout Pageまで

オンボーディングの定義と重要性

 

ユーザー・オンボーディングとは、「プロダクトの初回体験を通じて、新規ユーザーを継続カスタマーに変えるプロセス」を指す用語です。

世の中に存在するアプリやウェブサービスのほとんどが継続的に利用して初めて価値を生むことを考慮すれば、オンボーディングの重要性はそれだけで明白でしょう。

しかし、冒頭で紹介した確率が示す通り、新規ユーザーが何らかの理由によって継続利用を停止してしまう確率は決して低くありません。

この「何らかの理由」は主に以下の2種類に分類され、オンボーディングの改善は後者、すなわち「プロダクトの価値を十分に伝えきれていない」場合に「直接的な」効果を発揮することが期待されます。

    ①「プロダクトに価値がない」、「代替品で事足りる」など、本質的な欠陥を抱えている場合
    ②「何のためのアプリか分からない」、「使い方が分からない」など、プロダクトの伝え方に欠陥を抱えている場合

 

*①を確認する際には、 Growiz.usのPMFに関する記事をご覧ください。

 

一方で、ここで注意したいのは、「プロダクトの価値を高めること」と「価値を伝えること」は、必ずしも独立したタスクではないということ。

機能を改善するためにはユーザーを知ること、つまり継続的な利用が求められ、継続利用を促進するためには価値を伝えること、つまりオンボーディングの最適化が求められるのです。

本記事を参考頂く際には、必ずこの相互作用関係を理解することが重要です。

 

最後に、アクティベーション(初回体験)としばしば混同されるオンボーディングですが、本記事においては、プロダクトが提供するAHA体験をユーザーが初めて体験する瞬間(プロダクトの価値に気づく瞬間)をアクティベーション、利用開始後からその瞬間に辿り着くまでのプロセスをオンボーディングと呼ぶこととします。

 

オンボーディングに含むべき要素

 

本項では、オンボーディングに含むべき4つの要素を具体的に紹介します。

最初に紹介するバリュー・プロポジション以外はオプショナルであり、プロダクトによっては紹介する4要素全てを網羅する必要はありません。

あくまで「ユーザー体験を高めるためにはどの項目が必要か」という目線に基づいたオンボーディング設計を行いましょう。

 

本項を参考にオンボーディングの要素を決定した後は、本項以下の「4つの要素の『When』と『How』を設計する」を参考に、オンボーディング設計の詳細を詰めていきましょう。

 

バリュー・プロポジション

本項で紹介する4つの要素の内、唯一絶対に欠かしてはならないオンボーディングの要素が「バリュー・プロポジション」です。

バリュー・プロポジション(価値の提案)の意義は、「プロダクトがどのような価値を提供するのか」、「代替品が存在する中で、なぜこのプロダクトを使うべきなのか」をユーザーに対して明示することにあります。

後述にある通り、文字とヴィジュアルを組み合わせ、簡潔且つ明確にプロダクトの価値を明示することが求められます。

 

利用方法の説明

初めてプロダクトを利用するユーザーに対する利用方法の説明も、オンボーディングの重要な構成要素です。

機能が多く、複雑なアプリほどチュートリアルやウォークスルーと呼ばれる利用方法の説明の重要性は増すと言えるでしょう。

開発に携わる人間は利用方法を熟知しており、初回体験ユーザーの苦労を無意識に軽視する傾向にあることを肝に銘じましょう。

 

アカウント登録の要請

ユーザーがプロダクトの価値に気づく為に、アカウント作成が必要になる場合があります。

個人同士が繋がるSNSは、その最たる例でしょう。

アカウント作成の手間がユーザーのエンゲージメントを妨げる可能性を理解し、アカウント作成を一切排除する、もしくは作成時の取得情報を最小限にとどめるなどの工夫が必要です。(詳細は後述)

 

データの収集

アカウント作成を必要としない場合にも、ユーザーがプロダクトの価値を実感し、継続的に利用する確率を高める為に、性別、年齢、各種セッティング(プッシュ通知、連絡先情報、写真フォルダへのアクセス、位置情報など)を含む一定の情報が必要となる場合があります。

アカウント作成同様に、取得情報の選別には十分な注意を払いましょう。

 

4つの要素の『When』と『How』を設計する

 

プロダクトの性質によって、各要素をユーザーに提示する最適なタイミングや手法は変わってきます。

前項を参考にオンボーディングの要素を決定した後は、各要素をユーザーに提示するタイミング(When)と方法(How)の設計に入りましょう。

 

以下、4つの要素ごとにタイミング(When)と手法(How)を例をあげて整理していきます。

 

 

1. バリュー・プロポジション

 

バリュー・プロポジションの『When』

バリュー・プロポジション(価値の提案)は、一部の例外を除いて必ず『サービス起動直後』に行うべきです。

「プロダクトがどんな価値をもたらしてくれるか」というイメージが利用開始直後に湧かなければ、ユーザーはすぐに離脱して、二度とプロダクトを利用することはないからです。

 

バリュー・プロポジションの『How』

バリュープロポジションを伝える代表的な方法として、以下の4つが挙げられます。

 

1. スライド形式

複数のイメージと文言をスライド形式で見せることにより、プロダクトの価値を伝える。

Airbnbなど、プロダクトのベネフィットに複数の軸がある時に有効。

1airbnb

 

2. タグライン

プロダクトの価値を簡潔な言葉で表現し、一画面に収める。

Secretの「匿名で友達と話そう」のように適切な表現を用いれば、簡潔にサインアップ前の期待感を醸成できる。

2secret

 

3. 動画

プロダクトの価値を感覚に訴えかけて伝える手法。

スライド形式やタグラインでは表現しきれないイメージを伝えることができる。

3paper

 

4. 個別のユースケースを伝える

プロダクトの具体的な活用例を複数紹介することで、そのプロダクトの価値を伝える手法。

Pinterestのように、プロダクトの活用法が無数に存在する場合に有効な手法。

4pinterest

 

 

バリュープロポジションのタイミングに関して言及した「一部の例外」とは、FacebookやTwitter、Instagramなどの超有名サービスを指しています。

これらのアプリは、デバイスの買い替えによるサインインや友人から紹介されての登録が多く、ユーザーは既にそのプロダクトの価値を理解している為、余計な情報を削除することでサインインとサインアップに特化した見せ方をしているのです。

growiz2.001

 

2. 利用方法の説明

 

利用方法の説明の『When』

利用方法の説明のタイミング(When)は、大きく「事前」と「最中」に分けられます。

すなわち、プロダクトの利用体験に入る前に説明するのか、利用体験をする中で説明するのかの二種類です。

 

利用方法の説明の『How』

 

「事前」に説明する場合 

最も一般的なのは、ウォークスルーで説明する方法でしょう。

利用方法の説明自体が、プロダクトの価値の訴求に繋がる場合に有効な手法です。

 

WEBサービス同士を連携させるサービスであるIFTTTは、使用方法の説明自体が価値の訴求になっています。
5ifttt

 

「最中」に説明する場合

利用体験をする中で説明する場合の代表的な方法として、以下の2つが挙げられます。

 

1. インライン

矢印やポップアップなどを用いて、実際の画面の上にレイヤーを被せて説明する手法。

実際の画面を用いて機能説明をするので、ボタン及びリンクの格納場所が分散している際に有効です。

 

6fourssquare

 

特にオンラインストレージサービスなど、利用開始直後にどうしてもブランク(空白)が発生してしまう場合は、どういった操作をすればその空白を埋めることができるかを説明することで、サービスの理解度を高めることができます。

 

9blank

 

2. インタラクティブ

ユーザーに実際に操作してもらい、都度フィードバックを返す手法。

実際に操作してもらうことで、ユーザーの理解度と定着度を高めることができます。

 

Mailboxのようにデモ画面を用いる他に、Paperのように実際の画面を用いる手法もあります。

 

7mailbox

 

3. アカウント作成

 

アカウント作成の『When』

 

アカウント作成を求めるタイミングは、ユーザーにプロダクト内のコンテンツを見せる前と後に分けられます。

後者はあまり一般的なタイミングではありませんが、アプリ起動直後は登録を求められず、中身のコンテンツを閲覧する中で気に入ったコンテンツにLIKEなどのアクションを起こすと登録を求められるTumblrやTwitterはその最たる例と言えるでしょう。
ユーザーにコンテンツを見せる前に登録を求めるメリットとしては、以下の2つが挙げられます。

  • アカウント情報と紐付けて、パーソナルにコンテンツ配信ができる
  • ダウンロードからアカウント登録のファネルが管理しやすい

 

一方で、ユーザーにコンテンツを見せた後に登録を求めるメリットとしては、以下の2つが挙げられます。

  • 実際にコンテンツを閲覧する中でプロダクトの価値に気づく類のサービス(主に画像閲覧系など)では、コンテンツを見せる前に登録を求めるよりも登録率を高められる場合がある。
  • 一部のマニアックな機能を除いて登録がユーザーにもサービス運営側にも必要ない場合は、登録ステップを一切排除することで離脱をなくし、全体のファネルを改善することができる。

 

15yahoo_train

 

(Yahoo!乗り換え案内)

 

アカウント作成の『How』

ユーザーにコンテンツを見せる前にアカウント作成を求める場合の代表的な手法として、以下の2つが挙げられます。
1. 明確に登録を求める

SNS連携によるサインアップや、フォーム記入などのステップをユーザーに求める手法。

次に述べる手法と比べて、ユーザーの情報をより多く得ることができる反面、登録ステップでの離脱率が高くなるというデメリットがある。

 

10signup

 

*注意点や手法に関しては、次項「データの収集」で更に詳しく説明しています。
2. ワンタップでアカウント作成を完了させる

ユーザーが「はじめる」や「利用する」ボタンをタップすると、ユーザーに情報記入を求めることなく、裏側でuser_idを振り分けることでユーザー登録が完了する手法。

登録ステップでの離脱率を劇的に改善することが出来るが、ユーザー情報の取得やSNS連携の促進は難しくなるデメリットもある。

 

16iQON

 

 

 

一方で、TumblrやTwitter、そしてhouzzを含むサービスは、ユーザーにコンテンツを見せた後、つまりユーザーにプロダクトの価値が伝わった段階でアカウント作成を求めています。

「気に入ったコンテンツに対して(Likeや保存などの)アクションを取りたい!」という感情が芽生え、「Like」や「Save」などをタップしたタイミングでアカウント作成を要求することで、登録を押し付けられているという感情を見事に抑制しているのです。

ユーザーにとって価値のないコンテンツのみを公開したり、アカウント作成を魅力の無いアクションと結びつけないように注意を払いましょう。

 

グロースハックデータベース.001

 

4. データの収集

 

データ収集の『When』

データ収集のタイミングには、アカウント作成時にデータを収集するパターンと、プロダクトを利用する中で徐々に収集するパターンの2つがあります。

前者のメリットとしては、アカウント作成時に得た情報を活用することで提供コンテンツのパーソナル化が可能となり、その後の継続率を改善出来ることが挙げられます。

デメリットとしては、アカウント作成時に伴うユーザーのタスク量が増えるため、データ収集段階での離脱率が高まる点が挙げられます。

 

プロダクトを利用する中で徐々にデータ収集するパターンのメリットとしては、情報収集ステップに置ける離脱率を抑制出来る点が挙げられます。

デメリットとしては、アカウント作成時に求める場合と比べて情報の入力率が低下する傾向が挙げられます。

 

データ収集の『How』

アカウント作成時に情報入力を求めるパターンとしては、主に以下の3つの手法が考えられます。
1. フォーム型

一般的な、情報入力フォームでユーザーのデモグラフィック・データを取得する方法です。

フォーム型を用いる際は項目数が離脱率に比例するため、不必要な項目を削ることに注力しましょう。

 

11beats

 

2. SNS連携

FacebookやLinkedInとの連携を通して、ユーザーのデモグラフィック属性を含む様々なデータを取得する手法です。

フォーム型と比べて離脱率を抑制することが出来ますが、ターゲット層のITリテラシーが低く、SNSアカウント所有率が低い場合には、意図に反して離脱を高めてしまうデメリットも存在します。

また、最近ではRunKeeperやSoundCloudのようにSNSフィードに利用詳細が表示されることを嫌忌するユーザーも増加している為、SNS連携を求める際には①フィードには何も表示されないことを伝える、②SNS連携はあくまでオプションの1つに留めるなどの工夫が必要です。

 

12jelly

 

3. 振り分け型

サービスの利用開始と同時に、診断ゲームのようなインタラクティブなフォーマットをユーザーに提示することで、データを取得することが出来ます。

脳トレサービスのLumosityは、初回起動時に数個の質問をユーザーに提示することで、各ユーザーの嗜好に最適化されたプログラムを配信しています。

 

13lumosity

 

 

 

プロダクトを利用する中で徐々にユーザーから集めるパターンとしては、主に以下の3つの手法が考えられます。
1. タイムライン型

アカウント作成完了後、タイムラインの中に情報入力を求めるモジュールを流すことで、ユーザーからの自然な情報入力を促します。

16iQON

 

2. プログレス型

LinkedInのように情報入力のステップをプログレスバーで表示することによって、ゲーミフィケーション効果から登録完了に対するモチベーションを促進します。

 

14linkedin

 

3. コミュニケーション型

メッセージ系サービスならではの珍しい手法として、Slackは、botとメッセージのやり取りをする中でユーザーが自身の情報を入力出来る手法を用いています。

 

15Slack

 

 

 

4つの要素を全て含むSlackのオンボーディング

 

最後に、4つの要素(バリュー・プロポジション、利用方法の説明、アカウント作成、データの収集)を全て網羅するSlackのオンボーディングを観察することで、皆さまの理解を確実なものに出来ればと思います。

 

バリュー・プロポジション

When:サービス起動直後
How:タグライン

 

サービス起動直後のタイミングに、タグラインで、Slackのコアなバリューを伝えています。

 

16Slack

 

利用方法の説明

When:利用体験の最中
How:インライン

 

利用体験の最中に、インライン形式で利用方法を伝えています。

 

スクリーンショット 2014-08-29 22.27.38

 

アカウントの作成

When:コンテンツを見せる前
How:明確に登録を求める

 

ユーザーにコンテンツを見せる前に、明確にアカウント作成を求めています。

 

スクリーンショット 2014-08-30 12.16.17

 

データの収集

When:プロダクトを利用する中で徐々にユーザーから集める
How:コミュニケーション型

 

プロダクトを利用する中で、コニュニケーション型の手法を用いて徐々にデータを集めています。

 

15Slack

 

 

オンボーディングの参考になるサイト集

 

User Onboarding

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User Onboarding」は、ユーザーオンボーディングの専門家であるSamuel Hulickが、様々なアプリやWEBサービスのオンボーディング体験に関するレビューを公開しているサイトです。

ところどころ辛辣な意見もあり、かなり参考になります。

 

UX Archive

スクリーンショット 2014-08-15 18.54.44

 

UX Archive」は、アプリのUXを一連のスクリーンショットでデータベース化しているサイトです。

アプリ毎はもちろん、体験毎に検索できるため、オンボーディングや購入導線の事例だけを一気に見ることも出来ます。

 

GoodUI

スクリーンショット 2014-08-13 19.25.56

 

GoodUI」は、UIデザイナーのJakub Linowskiが公開している、ユーザビリティを上げるためのアイディア・リストです

現在既に49のアイデアが投稿されており、同氏によると近々それぞれの施策の数値的効果も公開する予定だそうです。

 

Shots of Things that Work

スクリーンショット 2014-08-13 19.39.37

 

Shots of Things that Work」は、著者が効果的な施策のスナップショットをひたすら投稿しているTumblrブログです。

アイデアの宝庫として有用です。



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まとめ

 

本記事では、最高の初回体験、そして高い継続利用率の維持に不可欠であるユーザー・オンボーディングの重要性とその秘訣を解き明かしました。

 

はじめに、「オンボーディングの定義と重要性」と「オンボーディングに含むべき要素」では、オンボーディングが重要とされる理由を4つの要素と共に紹介しました。

オンボーディングを設計する際には、オンボーディングのコアを形成する「バリュー・プロポジション(価値の提案)」と、「利用方法の説明」、「アカウント作成」、「データの収集」という3つのオプションを、サービスの特徴に応じて組み合わせることが大切です。

あくまで「ユーザー体験を高めるためにはどの項目が必要か」という目線に基づいたオンボーディング設計を心がけましょう。

 

次に、「4要素の『When』と『How』を設計する」及び各要素の説明では、いつどのようにオンボーディングの各要素を提示すべきか説明しました。

サービスの特性に合わせて、最善の施策とタイミングを組み合わせましょう。

 

具体的な事例を研究したい皆様には、本記事で紹介したSlackの事例や参考サイトの事例をご覧頂ければ幸いです。

 

繰り返しになりますが、オンボーディングはユーザー体験を高め、継続利用を促す上で非常に重要な役割を担います。

プロダクトのコア機能同様に、オンボーディング施策も絶えず改善を繰り返しましょう。

 

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