クリエイティブな施策アイデアを考案するための秘訣(ケーススタディ付き)

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サービスの課題はわかっているが、良いアイデアが出ない、アイデアが出てもどれを実施するべきか判断できないという悩みは、グロースハックに関わったことがあれば一度は抱えるだろう。

今回はその悩みに解決策を提示する。

手法の提示だけでなくケーススタディを解いていく形になっているので、自身のサービスならどうするか想像しながら読み進めていただきたい。

解決すべき課題の優先順位が決まっている前提で、「アイディエーション」→「アイデアの決め方」という二部構成で話を進める。※課題の優先順位についてはこちらの記事のインパクトと頻度の箇所を確認していただきたい。

具体的に図示すると下記の部分になる。

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※グロースハックの全体像が不安な場合はこちらの記事から読み進めて欲しい。UX改善による本質的グロースハックのプロセス

例として「ノンプログラマーでもブラウザ上でWebサービスが作れる」架空のサービスを考える。このサービスはブラウザ上でオブジェクトを配置することでSNSなどを簡単に作ることができるのだが、下記のような課題が生じていた。

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それぞれの課題について簡単に説明しておこう。
・ユーザーにプロダクトを使う動機づけが出来ていない
→ユーザーは最終的に何が、どこまでできるのか分からないため何をしたいのか分からない。

・エディターの使い方が分からない/分かりづらい点が多い
→データベースやボタンなどオブジェクトが多く、どこから手をつけていいのか分からない。

・ローディングが長い
→ただでさえ複雑なサービスなのに、さらにユーザーにストレスを与えてしまっている。

・エディターのUI周りのクオリティが十分でない
→一通りの操作はできるが、設計が不十分なため、ボタンなどをただ並べただけの状態になってしまっている。

・登録フローが容易でない
→エディターを開くまでの階層が深く、煩雑になってしまっている。

上記のように課題を整理しきったところで本格的なアイディエーションに入ろう。
もし、自社サービスで課題が出ている場合は頭の中で思い出しながらこの後を読み進めて貰えると効果的だ。

Step1:アイディエーション

アイディエーションでは世界的なデザイン会社IDEOが提供するDesing Tool Kitのうち2つを用いる。IDEOはAppleの初代マウスをデザインしたことなどで世界的に有名なデザインファームだ。

使うツールは下記の2つ、
Analogous Inspiration
 HMW Framework

■ Analogous Inspiration(類推法)

アイデア出しに使うのはこのツールだ。名前の通り、他のサービスから類似点を抽出してアイデアの種にするというツールだ。準備をしっかりと行えば、ただブレストするよりも量と質ともに高いアイデアを出すことができるだろう。このツールを用いた事例では、緊急治療室のある病院からIDEOが受けた依頼が有名だ。

そこでIDEOが行ったのは、医師を連れてF1のピットを見にいくことだった。「数秒の時間を争う世界」という類似点がF1と緊急治療室にはあったからだ。F1のピットをメンバーが観察すると、整備師がスパナを複数本持っていることに気がついた。でも「なぜ、複数本も?」と疑問に思ったメンバーが注意深くレースを見ていると、ある整備士がスパナを落とした。しかし、すかさず整備士は予備のスパナを取り出して作業を進めた。そう、複数本スパナを持っているのは落としたときに拾う時間を節約するためだったのだ。この「スパナ落としたら拾わない」というところから、助手が手元に器具を複数個持っておくようにし、落としてもすぐ次のものを渡すことができるようにすることで時間を生み出したのだ。

この事例では「どうすれば限られた時間の中で数秒の時間を生み出すことができるだろうか。」という課題に対して、F1というアナロジーを用いている。

さて、出てきている課題に対してすぐにでもAnalogous inspirationを試したいところだが、実は現状の課題の形のままでは、うまくできずに停滞してしまうだろう。そこで、Analogous inspirationを用いるための下準備として、課題の抽象度を上げることHMVFrameworkを用いて考えやすい問の形にすることの2点を行おう。

まずは、抽象度の問題を解決しよう。抽象度が高すぎたり、低すぎたりすると上手くアナロジーをすることができないのだ。

特にインパクトが大きい下記の二つの抽象度を上げてみる。

・ユーザーにプロダクトを使う動機づけが出来ていない
他にないタイプのサービスの価値が十分に伝わっていないのでアクションできていない。

この課題をさらに細かく分解すると下記のような形になる。
- サービスを使った際の成果物をはじめにユーザーに伝えられていない。
- サービスを使うベストプラクティス/道筋をユーザーに示せていない。
- その場で成果を確認しづらいため、ユーザーが脱落している。
- 多岐に渡るベネフィットでユーザーが混乱している。

・エディターの使い方が分からない/分かりづらい点が多い
複雑な操作でユーザーへの負荷が大きく使い方が理解されていない。

抽象度を上げるのはトライ・アンド・エラーしていくのが基本だが、どうしてもうまくいかないときは下記の方法を試してみると良いだろう。

・ユーザーテストを振り返る
ユーザーテストを振り返って、出てきた課題がユーザーのどういった行動から導き出したのかをヒントに課題を言い換えてみよう。

・要素分解
課題で使われている言葉から連想をして言い換えをしてみる。たとえば、「現在のエディター」から連想されるもの「使いにくい」「わかりにくい」「不親切」「複雑」などのワードを使って元の課題を言い換えていく。

■ HMW Framework

ただし、抽象度を上げただけでは準備は不十分だ。さらに、明確な質問の形にして脳が処理しやすくなるようにするため、「我々はどうすれば〇〇できるだろうか?(How might we 〜)」の形に変換していく。抽象度を上げてからでないと、このツールを使ったとしても、脳が処理しやすい形になりにくいので、必ず一度抽象度を上げてからこのツールを使おう。それでは、 HMW Frameworkを用いて、課題を問の形に言い換えてみる。

・複雑な操作でユーザーへの負荷が大きく使い方が理解されていない。
→ どうすれば、複雑な操作をユーザーに負荷のない形で理解してもらえるか?

・他にないタイプのサービスの価値が十分に伝わっていないのでアクションできていない。
→ どうすれば他にないタイプのサービスの価値を伝え、主要アクションを取らせることができるのか?

※HMVの抽象度の良し悪しは出てくるアイデアの量によって決まる。実際に行うときは、細かいやり方が書いてあるこちらの記事も参考にしていただきたい。デザインにおけるHow Might Weとは何か:具体例とその効果

 

課題を質問の形したところで、やっとAnalogous inspirationを使うことができる。ここでは問を1つに絞ってアイデアの決定まで進める。「どうすれば複雑な操作をユーザーに負荷のない形で理解してもらえるか?」という課題にAnalogous inspirationを用いると下記のようなサービスが上がった。

keynote : MacOS向けのスライドツール
iPhoto : MacOS向けの写真管理ツール
Vine : 6秒間だけ動画を撮影して楽しむビデオクリップSNS
Evernote : 大量の情報をスッキリ整理できる有名ノートツール
Flat : オンラインでできる音楽制作ツール
Bear : Markdownなどのさまざまなマークアップに対応したテキストエディタ・アプリ
Pinterest : 簡単で楽しいアイデア探しツール
HubSpot! : マーケティング、セールス、顧客関係管理(CRM)をつなぐ総合的なプラットフォーム 等

※Webサービスやアプリに限らず、リアル店舗などもアナロジーの対象になりえますが、今回はブラウザ上のツールのためWebサービスが中心になった。

上記のサービスを触りながら、アイデアをブレストして、クラスタリングを進める。最終的に出てきたアイデアをクラスタ化すると下記の5つのようになった。

・テンプレート(例:keynote)
keynote_template

・チャレンジミッション(例:Vine)
※一つ一つタスクを与えてそれを達成させることでサービスを理解させるやり方、ソーシャルゲームのチュートリアルのイメージだ。
Vine_challengeMission

・プロダクトツアー(例:HubSpot!)
HubSpoy

・初期状態から入っているサンプルコンテンツ(例:Bear)
サンプルコンテンツとしてサービスの成果物を先に見せ、かつサンプルの中で手順を提示する。
Beat_sample

・ウォークスルー(Pinterest)
6831035

ここからこれら5つを整理して実施するアイデアを決めていく。

【補足】
アナロジーと言っても結局はセンスの差ということを避けるためには、インプットの量を増やすことが必須だ。ここでは主な方法を3つ上げるので、試してみるといいだろう。

ProductHunt
登録しておくことで毎日メールに海外のイケてるサービスの最新情報が届く。Googleの拡張機能を使うと、新しいタブを開く度に最新の情報を得ることができる。こういうところは仕組み化してしまおう。

AppAnnieのランキング
海外で流行しているアプリをDLして、新しいUI/UXを確認しておくと商談など様々な場面で役に立つ。

・素直にググる
アナロジーが上手くいかないときはググってサービスを探してみる。自分が知らないサービスが意外と見つかるので、ワークショップ中に困ったらとにかくググってみると良い。

Step2:アイデアの決め方

最後に出てきたアイデアの優先順位を決めていく。雰囲気でアイデアを決めるのではなく、下記の手続きを踏んでアイデアを決めると精度が格段にあがる。順を追って説明しよう。

①工数での並び替え
エンジニアと相談しながら工数別に並べ替える。ポイントは一番工数がかかるものとかからないものを最初に決めることだ。そうすることで他のアイデアを相対的に配置できるので、並べ替えがやりやすくなるはずだ。
ideation1

②インパクトでの並べ替え
次にインパクトを効果と効率を考えながらクラスタリングしていきます。※効果と効率についてはこちらの記事を参照
ideation2

 

③意思決定
最後にマトリクスを見ながら、組み合わせを考えつつ工数とインパクトで最大値になるものを実施しよう。ただし、最終的にはリソースやスケジュールなどを総合して決定する必要がある。

まとめ

アイデア出しというととりあえずブレストとなることが多い。しかし。アイデア出しにも実は明確なメソッドがあり、それを用いることで出て来るアイデアの量と質を高めることができる。
また、最終的にどのアイデアを実行するか選択する際にも、上述のマトリクスのような客観的に判断できるツールを用いることで意思決定の精度は格段に上がる。グロースの8つのステップにはそれぞれ明確な手法があるので、一つ一つ丁寧に実行することで必ず数字を上げることができるはずだ。

メンタリングなどお仕事の依頼は下記メールアドレスまで。
kent.kajitani@growiz.us

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Kent Kajitani Written by:

「グロースハックの教本」著者 大手グローバルブランドを含む複数企業にグロースハックとUXデザインのコンサルティングを行っている。 東京大学経済学部卒業。2015年末まではVASILYでiQONのグロースを担当。米国UXデザインプログラムTradecraft卒業。

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